課題名 |
代表者名 |
代表者所属 |
概要 |
高性能直接法N体計算ベンチマーク[報告書] |
似鳥 啓吾 |
東京大学大学院理学系研究科天文学専攻 |
NINJA (N-body i ‘n j Algorithm)は、極めて高いスケーラビリティを持つN体計算コードである。粒子数を際限なく増やせばリニアなスケーリングが得られるが、実用上はそれほど大きくない問題規模で高い実効性能を得ることが重要である。このとき計算機に要求されるのは、1ステップ平均1 ms程度の間隔で全プロセッサが同期しながら足並みを揃えて動作することである。このためには、ネットワークの(特に大域的な集団通信の)レイテンシが小さいこと、OSのジッタの影響を受けないことが必要である。このことから、NINJAで小さな問題規模から良好なスケーリングが得られたシステムは、システムとして高いスケーラビリティを持つものとみなすことができる。 |
海洋循環形成プロセスの高解像度シミュレーション[報告書] |
羽角 博康 |
東京大学気候システム研究センター |
海洋循環形成に関する大規模シミュレーションを実施する。全海洋規模と縁辺海規模(~1,000 km)の2種類を対象として、前者は10 km程度・後者は0.1 km程度の空間解像度を実現し、それぞれの規模の海洋循環形成における各種海洋物理プロセスのスケール間相互作用を定量化することを目的とする。これらのシミュレーションに用いる既存アプリケーションの高並列チューニングも併せて目的とする。 |
3次元不均質場での地震波伝播の大規模シミュレーション[報告書] |
古村 孝志 |
東京大学大学院情報学環・総合防災情報研究センター | 3次元的に不均質な媒質中の地震波動伝播と強震動生成の数値シミュレーションを実施する。プレート境界や内陸活断層の破壊に伴い放射される地震動が、複雑な地殻・上部マントル構造を伝播し、さらに地殻表層部の堆積層によって強く増幅され、構造物に被害をもたらす強震動を生成する物理過程を数値シミュレーションにより明らかにする。これにより、将来発生が予想される大地震の揺れの予測と災害軽減を目的とした、高精度強震動予測シミュレーションの実用コードを整備する。
京速計算機を用いて、日本列島規模の大規模高精度シミュレーションを実現するために、これまでベクトル計算機(地球シミュレータ)用に開発・整備した並列波動伝播、津波シミュレーションコードを、スカラーCPUおよびMassive Parallel(2000〜8000コア)並列計算に向けたチューニングを進める。 |
密度行列繰り込み群法と行列対角化による強相関量子系のシミュレーション[報告書] |
町田 昌彦 |
日本原子力研究開発機構システム計算科学センター |
1)原子物理学の最先端の話題である光学格子中の原子ガスと2)固体物理学において最新の話題となっている強相関電子系の二つを研究対象とし、厳密対角化法(対角化一般も含む)
と密度行列繰り込み群法の二つの手法を用いて大規模計算を行う。1)に対しては、2次元の光学格子において、今後、最もホットなトピックスとなる四角及びランダムハバードモデル、フラストレートした三角格子ハバードモデルなどの基底状態解明を目指す一方、2)に対しては、現在最も話題となっている鉄超伝導体や磁性体等の強相関効果を計算可能なミニマムモデルを用いて明らかにしたい。尚、用いる二つの手法については、地球シミュレータやAltix(原子力機構)での利用経験があり、特に地球シミュレータでは50%以上のパフォーマンスを出した実績を有していることを付記する。 |
課題名 |
代表者名 |
代表者所属 |
概要 |
プロセッサアフィニティ制御を組み込んだフレームワークによる実用大規模並列シミュレータの性能評価[報告書] |
小野 謙二 |
理化学研究所・次世代計算科学研究開発プログラム |
大規模分散並列環境において,研究や設計に役立つ様々な物理現象のシミュレータ開発を効率化し,そのメンテナンスや運用を円滑にすることを目的として,連成解析や可視化処理も含めたアプリケーションミドルウェアを開発している.このミドルウェアは並列処理,並列入出力,線形ライブラリなどの機能をもち,開発者は最適化されたそれらの機能を利用して高性能なコードを構築する.このようなフレームワーク型のアプリ開発では,提供するモジュール自体の並列性能が非常に重要となる.大規模システムはMPPかつマルチコア化が一つの明確な方向であり,アーキテクチャを考慮した高性能化が必須である.このような背景のもと,ノード内のNUMAアーキテクチャの共有メモリ並列とノード間のMPI並列のハイブリッド化,およびノード内のプロセッサアフィニティ制御を考慮した高性能化を行い,その性能を評価すること,および大規模計算機利用技術の蓄積を図ることを本プロジェクトの目的とする. |
T2Kオープンスパコンへのインヤン地球ダイナモコードの移植[報告書] |
陰山 聡 |
海洋研究開発機構・地球シミュレータセンター |
このプロジェクトの目標は、地球シミュレータに最適化された地球流体系のコード(地球ダイナモシミュレーションコード)のT2Kオープンスパコンへの移植を一つのケーススタディとして行うことである。我々が開発したこのコードは、4千個以上のベクトルプロセッサによる並列計算に最適化されており、2004年のゴードンベル賞(最高性能賞)を受賞したFlat MPI型の並列コードである。このコードをスカラー型超並列計算機に移植し、(1)そのまま実行した場合、どの程度性能が出るか? (2)短期間での最小限の最適化にはどのようなコードの変更が必要となり、どれだけの効果があるか? を明らかにしたい。 |
革新的シミュレーションソフトウェアの研究開発[報告書] |
加藤 千幸 |
東京大学・生産技術研究所 |
革新的シミュレーションソフトウェアの活用の一環として、産業イノベーションや環境問題への取り組みを支える中核となる下記6サブテーマ(次世代DE((1)、(2)、(3))、バイオ((4)、(5))、ナノ(6))を申請する。
(1)現象解明が困難なターボ機械内部の非定常現象(例えば、音源、振動、流体力)をLES解析により高精度に予測する。(2) ガスタービン翼における伝熱を高精度に予測することにより、翼の冷却設計に貢献する。(3) 流体と音が相互に作用しあうことにより発生するピーク音をLESによる高精度に予測する。これにより騒音の現象解明および低減を実現する。 (4) フラグメント分子軌道(FMO)法による化合物と医薬品標的タンパク質の相互作用解析の高精度化・高速化を行い実用性の向上を目指す。(5) 密度汎関数法による世界最大タンパク質の全電子計算を実行する。 (6) 次世代デバイス開発を促進させることを目指し、シリコン表面やシリコン原子空孔の大規模ナノシミュレーションを行い、ナノ構造や電気物性を高度に解析する。
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GXPシステムとそれを用いた大規模テキスト処理の実行[報告書] |
黒橋 禎夫 |
京都大学大学院・情報学研究科 |
本実験は, (1)多くのプログラムを組み合わせてできる処理の流れ(workflow)を, 並列処理の専門家でなくても大規模な環境で実行できるシステム(申請者の一人が開発したシステムGXP と, GXP用並列make)のスケーラビリティをテスト, 向上させること, (2)それを用い, 二つの大規模なテキスト処理workflowを並列実行すること, を目標とする. 実行するworkflowの一つは, 自然言語処理技術を用いた医学生物学論文検索システム(申請者の一部が開発したシステムMedie)のための, PubMed onlineアブストラクト全件(約1000万件)に対する, 構文的な情報(意味上の主語・述語など)の索引づけで, 世界に類を見ない規模の試みとなる. もう一つのworkflowは, 申請者の一部によって開発された開放型検索エンジンTSUBAKIのために収集された日本語ウェブページ1億件という大規模ウェブページコレクションを対象として, あらゆるページのペア間に含まれる類似文字列の検出を, 申請者の一人によって開発されたアルゴリズムSACHICAにより高速に行い, 類似・同一・引用関係にあるページなどを同定するものである.本workflowを実行することで, 検索エンジンの結果の質を向上(重複や類似の除去)させることができるだけでなく, 実際のウェブテキストに, 他のページからの引用とオリジナルな文章がどのくらいの割合で存在しているかなどの興味深い知見が得られる. |
全球雲解像正20面体格子非静力学大気モデル(NICAM)の開発[報告書] |
佐藤 正樹 |
東京大学 気候システム研究センター |
正20面体格子非静力学大気モデルNICAMは数kmメッシュで全球を覆って大気循環を計算する全球雲解像モデルであり、地球温暖化等の地球環境の変動メカニズムを解明することを目的としている。すでにNICAMにより、現実的な海陸分布のもとでの格子間隔3.5kmでの全球雲解像実験に成功しており、JST/CREST(全球雲解像)、21世紀気候変動予測革新プログラム等の組織内外の横断的プロジェクトのもとで研究を遂行中である。さらに、2011年以降にスタートを予定している京速計算機のターゲットアプリケーションとして有望視されており、さらなる高解像度・長時間の全球雲解像計算により気候予測精度の向上が期待されている。
NICAMはベクトル型の計算機である地球シミュレータ上で開発されている。そのためベクトル型計算機において効率的な計算が行えるようにチューニングが施されている。しかし現状においてスーパーコンピュータの大部分はベクトル型からスカラ型へと移行している。そこでスカラ型計算機である”HA8000クラスタシステム”においてNICAMの計算を実行し、パフォーマンスを検証する。検証結果を基にスカラ型計算機上においても効率的な計算がおこなえるようにチューニングを施す。 |
超並列計算によるマルチスケール・マルチフィジックス心臓シミュレーション[報告書] |
久田 俊明 |
東京大学大学院・新領域創成科学研究科 |
当研究チームでは、細胞イオンチャンネルや収縮タンパクの数理モデルから出発し有限要素法でモデル化された心室の収縮、血液の拍出に至る現象を一貫して再現できる国際的にも突出したし心臓シミュレータ、UT-Heartの開発を行ってきた。一方、有限要素法に基づく心筋細胞も並行して開発し、両者を組み合わせることでシームレスなマルチスケール・マルチフィジックスシミュレーションを実施するための準備を進めてきた。本HPC特別プロジェクトにおいては規模を縮小した心臓モデルと細胞モデルにより、約6000−8000コアを用いたマルチスケールシミュレーションを実施し、プログラムの検証・性能評価を行うと共に、医学的にも意味ある結果を得ることを目標とする。併せて、マルチコア計算機システムの性能についても分析する。 |