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1.科目名

2.担当教員

中島研吾(情報基盤センター教授)
情報基盤センター(浅野)3Fプロジェクト室2,内線:22719,e-mail:nakajima(at)cc.u-tokyo.ac.jp

3.概 要

科学技術計算T・コンピュータ科学特別講義T(有限要素法)に引き続き,MPIによる並列計算プログラミング入門,並列有限要素法のためのデータ構造,並列プログラムの作成法について講義し, Oakleaf-FXによるプログラミング実習を実施する。

本講義・実習は
「東京大学 学際計算科学・工学 人材育成プログラム」の一環として実施され,科学技術計算プログラミングに必須の項目である「SMASH(Science-Modeling-Algorithm-Software-Hardware)」を,できるだけ幅広くカバーし,広い視野を持った人材を育成することを目標とするものです。

4.背景・特長

有限要素法は計算機と深い関係にあり,計算機の発展とともに進歩してきた分野ですが,本学の各学部,研究科において実施されている有限要素法関連の講義は,理論,アルゴリズムに関する教育が中心で,プログラミングまでカバーしているものはほとんどありません。また,有限要素法は最終的には疎行列を係数とする大規模な連立一次方程式を解くことに帰着されるため,疎行列を係数とする行列解法と密接な関係を持っています。有限要素法を学ぶためには,背景となる物理,変分法などの基礎的な理論の他に,疎行列解法,特にプログラミングのためには疎行列の係数格納法に習熟することが不可欠ですが,疎行列解法まで含んだ教育を実施している講義はありません。

本講義の担当者は,計算力学が専門ですが,数値線形代数,特に実用問題向けの前処理付並列反復法の研究に長年従事しており,疎行列解法と関連したプログラミング技術の教育を実施してきました。本講義は有限要素法そのものだけでなく,連立一次方程式解法についても学習できる非常にユニークな試みと言えるでしょう。

並列計算機を使用した大規模シミュレーションの実施のためには,科学・工学と数理科学,計算機科学の専門家の密接な協力が必要となります。そのためには,数理科学,計算機科学の専門家もある程度アプリケーションに関する知識と経験が要求されます。本講義は,数理情報学専攻,計算機科学専攻の学生がアプリケーションに関する知識を効率的に得るのにも適しています。

5.評 価

6.受講条件,前提とする知識

参考文献

いろいろな書籍が出版されているが,これ,と言ったものはないし全てに目を通しているわけでもない。とりあえず,特に推薦できる書籍を以下に示す。これらは全て中島のところにある。
分類 著者 書名 内容    
HPC,並列計算法,MPI 奥田,中島 「並列有限要素解析〔I〕」 培風館,2004. 手前味噌ですみません(..=)-。CD-ROM付き。「GeoFEM」プロジェクトの成果。
HPC,並列計算法,MPI 樫山他 「並列計算法入門」 日本計算工学会編,計算力学レクチャーシリーズB,丸善,2003. CD-ROM付き,MPI中心。有限要素法,差分法,境界要素法の幅広い分野をカバーしている。巻末の付録(MPI関連)は見やすい。
HPC,並列計算法,MPI 三好他 「スーパーコンピューティング」,培風館,2001. 比較的新しい情報。
HPC,並列計算法,MPI C.Douglas他 「A Tutorial on Elliptic PDE Solvers and Their Parallelization」SIAM,2003. 並列計算について線形ソルバなど数学的な側面からのアプローチ。
HPC,並列計算法,MPI B.Wilkinson他 「並列プログラミング:ネットワーク結合UNIXマシンによる並列処理」丸善,2000.(原著1999) 計算機科学的アプローチ,基本的なことが一通り簡単に書いてある。
HPC,並列計算法,MPI P.Pacheco 「MPI並列プログラミング」,培風館,2001(原著1997) MPIプログラミングに関する初の日本語文献(訳書ではあるが)。例題豊富,自習書としては良い。C言語中心であるがFORTRANのソースもダウンロード可能。
HPC,並列計算法,MPI W.Gropp他 「Using MPI second edition」,MIT Press, 1999. 同じ著者による「Using MPI2(これは日本語訳有り)」とは違う本,MPICH(フリーのMPIライブラリの決定版)を開発したアルゴンヌ国立研究所のグループが執筆している。アプリケーションを念頭においた使用例も多い。必携の書である。
HPC,並列計算法,MPI W.Gropp他 「MPI:The Complete Reference Vol.I, II」,MIT Press, 1998. こちらはどちらかというと辞書的に使用する本。
HPC,並列計算法,MPI R.Chandra他 「Parallel Programming in OpenMP」,Morgan Kaufmann, 2001. 「地球シミュレータ」など共有メモリユニット用の並列ディレクティヴ「OpenMP」について書かれた世界で数少ない文献。
HPC,並列計算法,MPI K.Dowd 「ハイパフォーマンスコンピューティング」,オーム社,1994(原著1993) RISC計算機におけるキャッシュの利用法について解説した文献。
HPC,並列計算法,MPI S.Goedecker他 「Performance Optimization of Numerically Intensive Codes (Software, Environments, Tools)」,SIAM,2001. 最適化に関する解説書
数値解析手法全般 登坂他 「偏微分方程式の数値シミュレーション」第2版,東京大学出版会,2003. 「並列計算」とは直接関係ないが,数値解析法に関する入門書として適切。
数値解析手法全般 高橋他 「差分法」,培風館,1991. 差分法を中心に数値計算,シミュレーション技術全般に関して記述。なかなか味わいのある本である。並列計算に関する記述も多少あり。
数値解析手法全般 J.J.Dongarra他 「Templates for the Solution of linear Systems: Building Blocks for Iterative Methods」, SIAM, 1994.(邦訳:長谷川他「反復法Templates」朝倉書店,1995) 線形ソルバに関する解説書。簡潔であるが非常に分かりやすい。英語版はタダで ダウンロードできる。例題も豊富。
数値解析手法全般 J.J.Dongarra他 「Numerical linear Algebra for High-Performance Computing」,SIAM,1998. 線形ソルバに関する代表的な解説書。