地磁気ダイナモシミュレーション:コア内の熱源分布がダイナモ作用に及ぼす影響


大石 裕介

富士通株式会社


1990年代以降, 地磁気ダイナモの再現を目的としたMHDシミュレーションが盛んに 行われている. これらのシミュレーションの問題点として, 対流の駆動源が実際の地 球と異なっている点がある. 実際の地球では, (1) 地球自体の冷却, (2) 放射性元素 の崩壊, (3) 内核の成長に伴う潜熱の放出, (4) 内核の成長に伴う軽元素の放出など によって対流が駆動されている(e.g., Buffett, 1996). 一方で, 多くのモデルは下 部加熱のみによって対流を駆動している.しかしながら,下部境界で浮力を生み出す( 3), (4) の駆動源もそもそもは地球の冷却に起因する. そのため, 冷却を考慮しない モデルは現実的であるとはいえない. そこで, 本研究では冷却および下部加熱の双方 を考慮し, 下部加熱の寄与の割合が0%, 50%, 100%の3つのモデルによるシミュレー ションを行い, 熱源の分布がダイナモ作用に及ぼす影響を調べた. その結果, Kutzne r & Christensen(2002) などにより磁場の安定性を支配することが指摘されているレ イリー数のみならず, 熱源の分布の仕方もまた磁場の安定性に影響を与える可能性が あることがわかった.